http://www.kogakuin.ac.jp/events/201001/2001.html
伊藤慎一郎先生のお話を聞いてきた。前半は水泳の話で特に高速水着の話。後半はボールの話で野球とサッカー。
= 水泳と流体力学
- 100Fr 2017年くらいまで世界新はでないだろう。女子の方が影響がすくない
- 農耕民族 vs 狩猟民族との観点で、きごごち優先 vs 性能優先ということで、西洋でしめつけのキツい高速水着が開発された。
- 昔は裸が一番はやかった。実際にためすと裸だと50mで0.5sくらい速くなったらしい。水を吸収して重くなるのもある。
- 素材の変化: 絹→ナイロン→ポリウレタン
- サメ肌水着: もともとはヨットのriblet技術からきていて、バナナ渦(Bursting)をおさえる効果がある。
- バナナ渦: 2つの流れに沿った渦があわさってシンクロして1つの渦になり流れに垂直に立って抵抗になる。
- 従来ニット編みだったのがレーザーレーサーでは伸びないような織りかたになった。
- 抵抗の種類
- 形状抵抗
- 表面抵抗
- 造波抵抗
- 気泡抵抗
- 5%縮めると10%面積がへるので抵抗が10%減る。実際にレーザーレーサーを着てみると胸囲が104cmの人が99cmになった。
- ケノビの距離が13.2mから15.5mに伸びた。肺が潰れて上半身が沈むから水平を保ちやすくなる効果がある。
- 撥水機能で表面抵抗が少なくなる。
- 締め付けることで筋肉がブヨブヨするのを抑える。水があたって筋肉がゆれて波打ち抵抗になる。
- 非吸水
- 高速水着はつかえなくなるが、ふとももの締め付け効果は期待できる。
- 強く締め付けることで血行障害がおこっているかも。翌日にダメージがのこる感じがある。
- 日本人は小腸が長い→大腰筋が細い→上半身と下半身のつながりが弱くなる。
- 一般的に生物は体長が長いほど速い傾向
- アテネ五輪の決勝は男子185cm以上 女子175cm以上。
- 身長の遺伝因子は30-50%で環境の影響が大きい。オランダ人も昔は165cmが平均だった。
- 人間の泳速度の最高はせいぜい 1.1 bodylength/s。
= 魔球の科学
- ドラッグクライシス
- あるところで急に抵抗が減るところがある
- ディンプルで抵抗が落ちるポイントが低い速度に移る。
- 縫い目を減らしてスイートスポットをひろくするとかブレ球をなくすとか。
- バレーボールはラリーがおもしろいのでブレ球はないほうがよい。
- 野球
- 縦の変化
- ストレート バックスピン
- カーブ トップスピン 上にむけてなげる
- フォーク 放物線 毎秒10回転のサイドスピン 直球はボール1個分なのにフォークは50cmおちる
- カット(2シーム) 揚力がへる ボール1個分おちる
- ジャイロ 縦スライダー 弾道はナックルフォークとおなじだが 球速がおちない
- 横の変化
- 変幻自在
- ナックル 無回転 100km/hくらい カルマン渦 上下や左右にうごく 重力でもおちる 年寄でも投げらえる 50cmくらいうごく
- スピードの変化
- チェンジアップ 腕のふりよりも遅い まどをふくかんじで
- 縦の変化
- 揚力は 速度 回転数 直径の2乗 に比例する。
- トップスピンの球は空気を上にけとばして反作用で落ちると考えることもできる。
- サッカー
- アマの場合は回転数のわりにスピードがたりない。
- 無回転
- 新しいかたちのボールでは大きなカルマン渦ができやすくなった
- 従来ボールは剥離点が頂上付近にできるが、新しいボールは剥離点が前よりになる。
- だいたい1秒に1回くらいゆれるので距離が長い方がゆれる。
= 会場からの質問時間
- 飛行機のはね流体力学で説明できないという話をきいたことがあるが?
- ベルヌーイの定理で説明できる。
- ボーリングでは流体力学は効くか?
- ボールが重いので効かないとおもう。
- 農耕民族は不利なのか?
- 胴回りがおなじなら筋肉が小さくならざるをえない。
- 筋肉が太くないと勝てないというのは、実証はされていない。
- 研究対象が航空力学からスポーツにうつったのは?
- もともと生物がすき
- 機械の研究に嫌気がさしたので生物力学に
- スッポンの研究をしていたらイアンソープの泳ぎがスッポン泳法だった。
- ゴルフボールはこれからも進化するか?
- 研究は進んでいる。
- メーカーとしては新商品をだせば価格設定ができるので進化は続くはず。
- バスケットボールも新しいのが出るかも
- 速く泳ぐ泳ぎかたはあるか?
- 平泳ぎを開発中
- 北島のあとがつづいていない
- クロールの泳ぎかたを導入しようとしている (ストロークをへらす方法など)
- 背泳ぎも研究中
- シンクロで人によって粘度がちがうらしいが? (サラサラ/ドロドロなど)
- 温度によって粘度はちがうかもしれないが、プールはほとんど温度一定。
- (おれとしてはレイノルズ数のはなしかとおもったがどうだろうか)
- 新しい魔球は生まれるか?
- メジャーと日本では球の直径がちがうので
- 日本では通用しないのにメジャーでは...ということはある。
= バットのふり (おまけ)
- なぜダウンスイングでないとだめなのか
- upper swing: 芯にあたらなかったときに下向き揚力になってゴロになりやすい。
- level swing: ストレートはゴロ カーブはライナー気味になる (イチローはlevel swingが多い)
- down swingだとどんな球でもそこそこ飛ぶ (松井)
- 軽い球 ダウンスイングでのカーブボール
- 重い球 ダウンスイングでのストレート
- 最近の競泳選手は細身のようだが関節のやわらかさは関係があるか?
- イアンソープは関節可動域でひろいのであのおよぎにつながっているようだ。
- バレーやバスケをやるとよいというのは個人的な意見であって水泳だと無重力状態なので骨に刺激がたりないので。