野口先生のツィートでこの学会を知って、さっそくエントリー。
2011/09/01 09:47:03
ストロークメーカーはもはや古い。今ヨーロッパでは何が使われてるか?種目によりどんな形状が求められるのか?実演つき、学会員以外の一般参加ありのワークショップは10月16日です。2011/09/01 12:56:36
@koie 2日間通しで一般参加できますよ。初日は口頭発表やポスター発表、シンポジウム、授業実践となっています。授業実践はウチの学生(1年生)と一緒に実技授業が受けられます(笑)。
- 案内ページ: https://sites.google.com/a/swex.org/swex2011/
- 会場: 日本大学文理学部百周年記念館 http://www.chs.nihon-u.ac.jp/access_map.html
- テーマ: 「温古知新」
- 「古」は、会場である日本大学文理学部で長く教鞭を取られていた古橋廣之進先生にちなんでおります、とのこと。
- 野口先生のブログ: http://ameblo.jp/noguchiswimlesson/entry-11064625499.html
相模原を出るときは雨が止んでいたので、ふつうの靴と折り畳み傘で出動したが、桜上水に着いたらしっかり雨が降っていて風もあり足がぐちゃぐちゃになってしまった。大失敗。駅からの道には要所要所に学生さんたちが案内板を持って立っていたが、なんとなく学生っぽい人のうしろにくっついて会場近くまできたはいいが、入口をさがしてうろうろしてしまった。
非会員(事前登録だからといって安くはならない)で受付で4000円だして会場へ。会場は電源なし、WiMAXは入る。なんだかダークスーツが基本のようだ。ジーパン/ポロシャツなのは俺一人っぽい。やばい。目立たないように最後列に着席。
2011-10-15 開会式
会場内は原則飲食禁止、ペットボトルの飲料のみ可とのこと。近くに自販機がないとも。ペットボトルに水を入れてきた俺正解。
日本水泳連盟会長の佐野さんがいうには、
アジアエージグループでは自由形以外ではメダルがとれているが、自由形は他の国と互角になってきた。科学的トレーニングが必要である。
ということであった。
2011-10-15 午前 口頭発表1
間欠的漸増負荷泳テスト中における血中グルコース濃度の動態と代謝応答の関係
仙石泰雄/筑波大学/競泳
血糖上昇閾値(Glucose Threshold:GT)と、乳酸性作業閾値(Lactate Threshold:LT)・換気性作業閾値(Ventilation Threshold:VT)・最大乳酸定常値(Maximal Lactate Steady State:MLSS)から推定可能であるといわれているが、水泳でもそうなのか測定してみたらそうではなかった、という話。
血中乳酸濃度(Bla)と呼吸交換比(RER;酸素→二酸化炭素)をみると負荷を上げると上昇するポイントがあるが、血中グルコース濃度は上昇せず一定だった。
原因とか:
- 陸上では下肢の運動量が多いが、水泳は上肢の筋活動量が多い。
- 上肢と下肢で糖代謝特性が異なることがすでに知られている。上肢の方が炭水化物を利用率が高い。これは上肢の方が速筋が多いことによる。
- 下肢は筋量が多いので筋グリコーゲン貯蔵量が多い。
- 姿勢の違い。
- 水浸で脂質酸化が増えるという話もある。
- 糖新生は肝臓で行なわれる。筋肉内では行なわれない。筋グリコーゲンが血液中に出ることはない。
- インスリン・アドレナリンなども関係してくる。
- 高強度になるとインスリンよりもノルアドレナリンが効いてくる。
- VO2は運動強度に比例するが、VCO2は70%くらいから上向きになる。
水泳中のプル・キック動作時の酸素摂取動態の比較
門田理代子/筑波大学大学院/競泳
キックの方がVO2の立ち上がりが早かった。
実験ではVO2peakの速度の80%の速さで泳いで測定しているが、キックの80%とプルの80%では強度が違うのでは、という会場からの指摘があった。
心拍数/血中乳酸濃度も測ってみたが、これは差がなかった。HR=120前後。
通常、expモデルで時定数といったときは100%ではなくて64%くらい、との会場からの指摘。
クロール泳における1ストローク中の最小・最大速度にストローク頻度の増加が与える影響
松田有司/京都大学大学院/競泳
最大努力でストロークレートを変えたらどうなるか、という実験。
Idc(Index of coordination): 正だと左右の推進力にオーバラップ期間あり、負だとグライドのみの時間がある。
実験した最大ストロークレートが60 cycle/minというのは遅すぎないかという会場からの指摘があったが、一部の泳者に60以上のレートで泳げない者がいたということで、遅すぎるということはないとおもうとのこと。
Idcと最低速度の間に有意な相関があり、Idc<0になると最大速度の低下にくらべて最低速度の低下が大きいため平均泳速が低下しているという分析。
最大努力でストロークレートを落すにはIdcを小さくする(オーバラップをなくす)しかない(でなければ無駄なストロークパターンにするしかない)ので、とってもあたりまえのような気がする。
平泳ぎキック動作による推進力発揮に関する流体力学的考察
角川隆明/筑波大学大学院/競泳
足に圧力センサーをつけて測ったという実験。
設定上、静水(水中カメラが動かないように)でビート板をもって腰をロープで固定(前進しないように)したとのこと。
足の形状はキック中に変化しない仮定した。
速く蹴るだけではだめで、迎角(足の裏の面と蹴りの速度ベクトルの角度)が60度くらいになる必要があるとの結果がでた(その被験者のベストは100m 1:01)。へたな被験者では41度しかなく水を切っている感じになっている。
脚伸展で早く迎角をつけて、インスイープでも迎角を保つのが推進力を高めるコツではないかということであった。
会場からの質問では、ひきつけてくるときに迎角が0になっていないがこれは実験ミスあるいは計算ミスではないかという指摘があった。
平泳ぎにおける呼吸法がパフォーマンスに及ぼす影響のシミュレーション解析
寺内浩紀/東京工業大学大学院/競泳
腹式呼吸か胸式呼吸かで泳ぎにどのような変化があるか調べたというもの。腹式/胸式で浮心が違うため脚の位置が違ってくる。
SWUMをつかってシミュレーション。どうやらSWUMという超有名なシミュレータがあるらしい。調べてみたら2005年に発表されていたが、ぜんぜん知らなかった。
腹式呼吸トレーニングをしたあとで胸式呼吸をしてもらっても自然と腹式になってしまうらしい。
1ストロークサイクルを4分割した:
- T1: インスイープ
- T2: リカバリ
- T3: グライド
- T4: アウトスイープ
個人的には図4は向きが逆だとおもう。
基本的には腹式呼吸が速く泳げるという結果になったが、肺気量がより多い場合には、けのびで胸式呼吸にして足が浮きすぎないようにする必要がある。
胸式は息継ぎですぐに息を吸って息を漏らさないようにするのがよく、腹式では早めに吐く方がよいという結論で、腹式の方がピッチングが大きくなる(頭が下る)とのこと。
会場からは、1910年ごろには息は徐々に吐いて一気に吸えと指導されていたようだ、との話。
今日はここからZFS Dayに参加のため発表は聞いてない
2011-10-15 口頭発表2
「プールリハビリ運動教室」実施における身体的、生理的応答の臨床的考査研究報告 —坂戸市大学連携地域活性化支援助成事業を中心に—
水野加寿/城西大学/医学
小学4年生における「浮く・泳ぐ運動」の実践報告--安心・安全水泳の視点から--
篠原健真/鳴門教育大学附属小学校/教育
けのび動作の指導法改善とその多角的評価
中島きよ/筑波大学大学院/競泳
回流水槽における泳動作と実際泳動作時の比較 --PIV法による手部周り流れ場可視化結果と手部動作の関係から--
三輪飛寛/国立スポーツ科学センター/競泳
2011-10-15 プールサイドセッション
2011-10-15 口頭発表3
水球競技のシュート時における下肢動作の違いがパフォーマンスに与える影響 -- 巻き足と蹴り足の比較
乙女陽平/筑波大学大学院/水球
水球シュート時におけるゴールキーパーのセービング反応時間に関する分析
渡邉泰典/武蔵中学・高等学校/水球
水球における投球動作のシミュレーションモデルの開発
中山裕太/東京工業大学大学院/水球
水中動作を含めた水球競技における投動作の3次元画像解析
小林達也/愛知教育大学大学院/水球
2011-10-15 シンポジウム1
2011-10-15 ホスター発表
2011-10-15 懇親会
2011-10-16 口頭発表4
トラックスタートにおける台上での腕動作の違いがスタートパフォーマンスに与える影響
酒井紳/筑波大学大学院/競泳
スタートはグラブスタート・トラックスタート・キックスタート(バックプレートありのトラックスタート)がある。
トラックスタートの腕の振りには2種類あり、これを比較する。
- 腕を後方に動かし振り子のように前方に戻す(バタフライ型)。肘は伸ばしてストレートアームリカバリのようなの。
- 肩関節を伸展した後、外転させて前方に戻す(ストレート型)。肘を曲げてエルボーアップリカバリのようなの。
飛び込みの段階は4つに分かれる。
- ブロック (台上に足がついている状態)
- フライト (空中を飛んでいる状態)
- エントリ (水に入る段階)
- グライド (完全に水中に入った状態)
被験者が3人と少ないが、足離れ・手離れ時間、飛び出し水平/垂直速度、飛距離、10m通過時間を測定したところ、以下の傾向があった。
*項目 | *バタフライ型 | *ストレート型 |
*足離れ | 早い | |
*手離れ | 早い | |
*飛び出し | 上向き | |
*水平速度 | 速い | |
*10m通過時間 | 速い |
バタフライ型の選手は水平に飛び出すように改善する余地がある。
股関節の伸展速度は測っていない。
陸上で垂直跳びでは腕を降った方がいいのは確か。
腕を後に振るというのは同じ(どこまで後に振るかの違いはある)なので空中姿勢がどのように影響するかという問題でしかない。
グラブスタートとトラックスタートはほぼ同等らしい。
ストレートバックからバタフライスタートに変えるのに1年くらいかかったらしい(選手談)。
バックプレートを用いたスタート方法はスタート局面時間を短縮するか --大学女子競泳選手を対象として--
尾関一将/大阪体育大学/競泳
男子は女子と比較して脚伸展パワーが2倍くらいある。女子でもキックスタート(バックプレートありのトラックスタート)の方がよいかどうかの実験。
キックスタートの方が、15m通過時間が7.70±0.26s→7.60±0.29sに、足離れ時間は0.76±0.04s→0.73±0.04sに、水平速度は3.85±0.10s→3.95±0.16sと有意な差があった。飛び出し速度自体は差がなかった。
結論としてはキックスタートすべき。
会場からの意見で、ジュニアの場合は足が弱いと落ちるようなスタートになってしまうこともあり、その場合にはグラブスタートの方が水平速度が速くなる。
会場から、陸上競技では利き足が前で前足の方が2倍ほどのパワーを発揮するが、競泳ではどうかという質問があった。指導するときは後ろ足は軽く伸展させて前への動きをつくるだけといっているので利き足が前ではないかという回答だった。陸上とは違って競泳では重心が台上になければいけないので後足の使い方がちがってくるのではないかという意見もあった。
競技レベルが高くなると脚伸展パワーと15m通過時間の間に相関はないという研究結果もある。
大学男子競泳選手における水中ドルフィンキックのキネマティクス的特徴
武田剛/早稲田大学/競泳
被験者15名。100m 50.9sの選手も被験者の中にいる。
蹴り下げ幅は前後幅の2倍ほどで、後に蹴るというよりは上下に蹴っているといえる。
速度変化パターンは3種類みられた。
- 蹴り下げで加速 (平均速度:低)
- 蹴り下げと蹴り上げの両方で加速 (平均速度:中)
- 蹴り下げから蹴り上げの切り替わりでの減速が少なく速度を維持 (平均速度:高)
蹴り下げから蹴り上げに移るときの減速を少なくするのが重要なようだ。蹴り上げから蹴り下げはどのタイプの選手でも大きく減速している。
すくなくともこのレベルの選手間の比較では足首の角度はあまり重要ではないようである。
各タイプでテンポの差はなかった。
壁を蹴った直後とその後ではキックのパターンが違うが、今回は10m付近の映像をつかった。
蹴り下げ終盤ではどのタイプでも加速はしておらずブレーキにしかなってない。
体幹部の動きも重要だとおもわれるが、今回は傾向がわからなかった。
水泳における道具の使用方法が重心--浮心間距離に与える影響
櫻岡まりえ/新潟医療福祉大学大学院/競泳
初心者や子供では脚が沈みやすいので、浮力の小さいビート板をつかって顔をあげて脚が沈まないようにするのが望ましい。
この意見に対して会場から、短距離選手はプルの上半身を持ち上げるモーメントを相殺するためにキックをしているといわれているので、脚が沈むような姿勢でキック練習をするほうがよいのではないか、という反論がだされたが、それ以前のレベルの人を考えているということであった。
脚が沈むのは肩の柔軟性にも大きく影響されるとの意見もあった。
円皮鍼が泳パフォーマンスに与える影響
三村紗友理/新潟医療福祉大学/医学
円皮鍼(えんぴしん)は短かい針で皮膚を感覚神経を刺激して神経性の炎症をおこして血管拡張を狙うものらしい。
ラクテートカーブがシフトするかどうか実験してみたところ、効果は得られなかった。原因として運動強度設定が強すぎた可能性があるとのこと。会場からは陸上とは異なり水温による刺激があるので鍼の刺激がうすまってしまうのではないかとの指摘があった。
また皮膚の血量が増えるが筋肉の血流が増えるわけではないとするとパフォーマンスに差がでなかったのが説明できないかという会場からの意見があった。皮膚血流が増えることで筋肉血量が減ればパフォーマンス低下につながる可能性もあるとのこと。(でもスタート台に上がる前に胸をパンパン叩いて充血してる人っているよね?あれはだいじょうぶなのか?)
円皮鍼は競泳レースではルールで使用できないことになっているそうである。
鍼ははりっぱなしでも問題はないとのこと。医師に指示されたとおりに2〜3日はりつづける分には問題ないが1週間とかはりっぱなしにして炎症を起すとか粘着テープでかぶれるということはある。
2011-10-16 プールサイドセッション2 「練習用具の進化から見る競泳トレーニングの未来」
水着をもってくればプールに入て道具を体験できたのだが、もってきてないのでプールサイドで見学した。
- 野口さん
- なにがいちばん売れましたか?
- 協栄産業の社長さん
- ズーマーズですね。
原英晃さんと今井亮介さんの道具に対する話とふだんの練習の実演。
まずはフィンから。
原さん:
大学時代、キックは得意ではなかった。60sサークルがぎりぎり、55sだとサークルアウト。
ロングフィンで背泳ぎキックの練習をした。股関節から蹴り上げ、蹴り下げで臀部をつかう練習。
その次にズーマーズで筋力アップ。これは長い間利用した。
ズーマーズは固いのでフィンずれがおこるのとフィンを脱いだあとの感覚の違いが気になる。筋力と持久力アップが目的になっている。
ロングフィン+シュノーケルで気をつけキックをよくやった。
ロングフィンをつかうときは筋肉がストレッチするくらい大きく動かす。
ロングフィンを切ってつかったこともあった。
ズーマーズで足首や膝を痛めることもあった。最近つかっているDMCフィンはシリコン素材で軽いのでよい。
原さんのDMCフィンをつかった背泳ぎキックの実演では、足首をやわらかく使うのと股関節から動かすのが重要だとのこと。フィン先が水面から出ていたが、これはデモのために大袈裟にしたため。
今井さん:
道具の歴史に興味がある。はじめのころは四角いパドル。まだ自作する人もいる時代。そのあとストロークメーカーが出てきて一気に広まった。メンターパドルはストロークメーカーをつくった人と同じで、おそらく現場からの不満を解消するものとして作られた。
海外留学中の南カリフォルニア大では平泳ぎでもパドルとフィンは必ずつけて泳ぐように指導されていた。
ロングフィンだと初速が遅くなるのでタイミング(平泳ぎなのでタイミングはシビア)がとりにくい。パドルはファルクラムをつかう。ふつうのパドルと比べてリカバリで水がひっかかる感じがなくてよい。呼吸の時間を短かくしたい。パドルは手の大きさに近いものをつかう。
フィンをつけてドルフィンキックで泳ぐ。1日2000mくらいはフィンをつけて泳いでいた。平泳ぎのキックができるというフィンもあったがいまいちだとおもったので使っていない。ドルフィンキックで体を移動するだけ。
フィンをつかってみた人からの意見で、ズーマーズは重いのと足にフィットしないのとで速くキックしたときにフィンに動きが伝わらないが、DMCのはいいかんじ。
つぎにパドルの話。
原さん:
speedoの四角いパドルはよく割っていた。たぶん指先に力が入っていたんだとおもう。
ストロークメーカーはよくつかった。2・3種類を持ち歩いていた。ただパドルをとったあとのスカスカ感がきらいで、パドルの練習のあとにパドルなしで泳ぐのはいやだった。
メンターパドルになってスカスカ感が改善された。真中に開いている穴から水圧を感じるのがいいのかも。キャッチですっと入る感じがいい。ストロークメーカーを逆持ちしてキャッチの練習をしていたこともある。
アンチパドルはフィストスイムのようなものだが前腕が緊張しない。ストロークの軌跡を直してくれるかんじがする。仕事の合間に泳ぐのでふだんの練習量は少ないがアンチパドルとフィンをつけて泳いでエアロビックとテクニックの両方を同時に練習している。アンチパドルをつけると腹筋のつかいかたがよくわかる。
原さんの実演では、最初にアンチパドル+DMCフィンでゆっくり泳ぐ。グライドを長めにしているように見えたが聞いてみたところゆっくり手を降ろしているとのことだった。そのあとメンタパドルとDMCフィンでハードスイム。ゆっくり泳いでいるときは肘が曲っていたがハードに泳いだときは肘が伸びていた。これについても聞いてみたが特に意識はしていないとのこと。リカバリはキャッチのための前動作なので自然とそうなったのではということだった。
アンチパドルをつかってみた人の感想では、水がまったくひっかからないのとキャッチのときに沈む感じがあるとのこと。(沈むのは形状からくる揚力じゃないかなとおもう)
アンチパドル自体は重さがあるが水には浮く。
今井さんの実演では、アンチパドルをつかったアップ。アンチパドルをつけると不安定になるのでフィンをつけてバタ足で安定させる。実際のアップでは、なにもつけずに6回くらい泳いで、アンチパドルとフィンをつけて泳いだあと、はずして5回くらい泳ぐということをしている。
練習方法についての質問。
原さん: チューブアシスト+アンチパドルで泳いでそのあとチュブのみということもやる。基本的に1回の練習時間も短かいので一度に全部やらない。
今井さん: できるだけレーススピードで泳ぐようにしている。すべてをレーススピードというのは無理なので3かきだけとかにしている。
2011-10-16 ランチョンセミナー 「半熟隊とは何か?」〜あるいは競泳コーチングの温古知新〜
プールサイドセッションに移動する前にチケットを購入してチェリー(会議場は飲食禁止のため)で野口智博・奥野景介・加藤健志さんによるトークバトル。
加藤さんの「話が長い」ネタが炸裂。
2011-10-16 高騰発表5
高飛込入水衝撃値の測定
後藤香織/群馬大学/飛込
テレビなどで高飛込の衝撃が1〜2トンだと紹介されているが、これは1985年Stevensonらの研究で体重の16〜25倍との報告による。これは大きすぎるのではないかとおもい、カメラによる解析ではなく荷重計を用いて直接的に測ってみたという実験。サンプリングは4kHz。高速度カメラは240F/s。
まずは66kgの被験者が10mの高さから安全のため右足につけて足から飛び込んで(入水時に左足を引いてもらって右足のみの入水で)測定してみた。0.01msより狭いくらいの幅のピーク339kgfがみられた。
- 水面接触前 0.008秒のとき12.5m/s
- 水面突入後 0.02秒のとき13.5m/s (まだ加速している)
だいたい0.1sで体全体が水没する。
最大衝撃値は体重の約5倍となった。これはオリンピック級のボクサーの顔面への打撃350kgfに相当する。
54kgの被験者が5mの高さからオープンハンドテクニックで測定板をもって測定した場合はピークが195kgfほどになった。
- 水面接触前 0.008秒のとき8.685m/s
- 水面突入後 0.02秒のとき9.17m/s (まだ加速している)
肘が入水したくらいから抵抗が減少している。
最大衝撃値は体重の約3倍となった。
水中に入ったら手を掻いて加速するというスイム動作があるとのこと。
会場からは力積は小さいので短時間のインパクトには人間は耐えられるのではないかとの指摘があった。たとえばバレーボールのスパイクは700kgfになるそう。この質疑応答は話があわなかったみただ。
あとからググってみるとオープンハンドテクニック(手を組んで背伸びの形)のせいで手首が過伸展して故障する原因になってるみたいで、以前は拳骨で入水していたようだ。競泳の飛び込みとちがってできるだけ減速して水しぶきを押える目的があるようだ。
飛込競技男子ジュニア選手の身体特性の変化 --3年間縦断的評価による検討--
成田崇矢/健康科学大学/飛込
横断的な(おなじ年齢の選手をあつめての)調査はあるが、ある年齢幅の継時的な調査はない。ナショナルジュニア合宿に参加した13〜15歳の選手12名を対象とした。
有意な主効果を認めた項目: 身長、体重、立幅跳、30秒状態起こし、背筋力、倒立持続時間
長座体前屈の能力向上は13歳以前であることが示唆された。
14〜15歳で腰痛が多くなる。30秒上体起こし(腹筋)が標準はほとんど増加しないのに比べて飛込選手は増加していることから腹筋に比べて背筋が弱いことによる腰痛ではないかとのこと。
身長が低いのは回転しやすいとか、衝撃が少なくて水しぶきがあがりにくいとかの理由がある。
会場からは、なかなか3年間継続して調査できなかったのは途中で競技を止めてしまう場合があるからとのことだが、競技を続けている人との比較もあるとよいのではないかとの指摘があった。
飛込競技におけるノースプラッシュ入水技術解明に向けての一考察
倉澤歩/筑波大学大学院/飛込
定義:
- 1次スプラッシュ
- 水面に突入する際に起こるスプラッシュ
- 2次スプラッシュ
- 入水後に起こるスプラッシュ
ノースプラッシュ演技では2次スプラッシュが極めて小さく抑えられている。
水面を速く通過するほど高得点になる傾向があった。速くなることで泡のドームをつきやぶってスプラッシュを抑えられるという考えもある。
入水直後に手の先を頂点とする逆ドーム上の泡ができるが、ノースプラッシュ演技ではこのドームが小さい。
肘の過伸展がある方が肘の緩みがなくノースプラッシュを達成する要素ではないか。
オープンハンドテクニックで泡を逃しているという意見もある。
会場から、水の温度を測ってないとのことだが温度により粘性がかなり変わるので温度を揃えて測定すべきとの指摘があった。
シンクロナイズドスイミングの基本動作における高さと体力の関係
藤島遥香/筑波大学大学院/シンクロ
高さ=技術力とも考えられており、得点と高さに相関関係があったと報告されている。コントロールテストの結果と高さを関係を調査した。
コントロールテスト項目:
- 一般 (いわゆる体力)
- 筋力 (腹筋・背筋・腕立て伏せ・懸垂・垂直跳)
- 柔軟性 (横開脚、つま先伸ばし)
- パワー持久 (25mクロールレペティション)
- 持久力 (400mクロール)
- 専門 (体力に加えて技術力)
- パワー (ボディ・ブースト、レッグ・ブースト、全力エッグビーター)
- パワー持久 (負荷付きエッグビーター、負荷付き垂直姿勢)
- 柔軟性 (水中スプリット)
- ダイナミックハイト(スラスト、エアボーンスプリット)と相関があった項目
- ボディ・ブースト、レッグ・ブースト、25クロールレペティション
- ブースアップ
- レッグ・ブースト
- ステーブルハイト(クレーン)
- ボディ・ブースト、レッグ・ブースト
- 垂直ホールド、ホーパス
- ボディ・ブースト、レッグ・ブースト
- エッグビーターキック
- 垂直跳、負荷付き垂直姿勢
会場からの意見では高身長の人をあつめてきているので遅筋が多い人が増えてきているかもしれないとも。
ググってもたらシンクロ競技規則(http://www.swim.or.jp/10_league/rule/pdf/r_syn.pdf)に技の解説があった。
シンクロナイズドスイミングのシミュレーションモデルの開発
畠山剛/東京工業大学大学院/シンクロ
SWUMを複数人でも動くようにして4人のリストをシミューレションしてみたという話。
エッグビーターとかスカーリングとか単体の技術に関するシミュレーションは行なわれているが泳者同士の力の干渉があるシミュレーションはおこなわれてなかった。
人体間はバネとダンパーでつないだ。パラメータは試行錯誤で決めた。バネは硬すぎると発散してしまう。ダンパーで振動をなくすように。
体幹部のパワーは計算に入れていない。
実験と初期位置をあわせておいてシミューレションすると最後に5cmくらいずれが、よく一致した結果がえられた。
2011-10-16 シンポジウム2 未来のトレーニングを創造する
まず各パネリストから20分くらいの発表があり、そのあと会場からの質問という形式。
競泳 仙石泰雄(筑波大学) 「競泳競技における持久力能力を向上させる最適なトレーニング法とは?〜High Volume Training vs. High Intensity Training〜」
トレーニングの要素には次のものがある。
- 距離 (mileage)
- 時間 (duration)
- 頻度 (frequency)
- 強度 (intensity)
現場では距離に重点がおかれることがおおいが、強度に重点を置いたトレーニングでも持久力が向上することが報告されている。
HVTでもHITでもPGC-1αが発現する。このPGC-1αは持久系の能力に関係する包括的なタンパク質と考えられている。これは大学生でもジュニアでも同じである。
HVTで強度が低いトレーニングだと速筋でPGC-1αが発現しないため、HITで速筋・遅筋ともに動員するトレーニングが好ましいのではないか。ただ筋肉以外の循環器・呼吸器のトレーニングとしてHVTは有効である。
5秒連続最大努力 + 10秒休憩 を5セットというようなトレーニングがよいのではないか。
HITでもHVTでも最大限の努力をすることは重要である。
水球 南隆尚(鳴門教育大学) 「水球競技のルールとゲーム戦略の変遷に伴うトレーニング法の検証」
水球は1試合で3000mくらい泳ぐといわれていた。ルール改訂で競技時間が伸びたが最近の研究では1800mくらいだといわれている。選手交代を頻繁に行うような戦略がとられるているのも関係するだろう。
単に速く泳ぐだけでなく素早い動きが重要である。だいたい泳速度は0.9〜1.7m/s。
日本は他国より試合で泳ぐ距離が多い。
巻足では20kgくらいあがる。
2m近い東欧の選手に対抗するためには巻足だけではなく蹴足で素早く上にあがる必要があるだろう。
飛込 金戸恵太(金戸ダイビングクラブ) 「飛込競技の進化とトレーニング法の変化」
iPhoneでプレゼンのビデオをつくったそう。(すごくよくできてた) 奥さん(元渕幸)も登場。
昔と今とでは飛板飛込のふみきりがちがっていて、今は板先端で一度真上に跳躍して勢いをつける。これは難しくてビデオではタイミングがあわずに尻餅をつく練習場面も紹介されていた。
飛込は最高得点を競う競技ではなく、得点の積み重ねで勝敗が決まる。
ふみきりで8割決まってしまう。
トランポリンつかってジャンプしたときの空間認知の練習。選手の腰にゴムチューブをつけてそれを滑車でコーチが引っ張り上げより高くジャンプしたときの回転技の練習など。
バランスボールなどもつかって股関節・体幹の強化をやっている。ビデオでは熟練の選手と今回初めて挑戦する人との比較が紹介されていた。
シンクロ 田村尚之(国立スポーツ科学センター) 「シンクロナイズドスイミングにおける体力強化の取り組み」
飛込と似て大きな技をやるにはスタビライゼーションのトレーニングが重要。ただバランスボールで筋力アップしても足を動かしたときに腹筋が抜けるようなことがないよう練習する。たとえば、両足を浮かした状態で片足だけ前後左右に動かすなど。
日本人は身長が低いため高く上がるために脚力を強化して脚が太くなると倒立が不利になったり脚が短かく見えてしまうため、臀部の筋肉を強化するようにしている。
ハイプルマシン(見た目は体脂肪計みたい)でリアルタイムにスピードを選手にフィードバックする装置をつかっている。